今回はUSB給電規格の「USB Power Delivery(パワー・デリバリー)」についてご案内していきます。
以下より「USB PD(ピーディー)」という略称で説明させていただきます。
USB PDの登場により、USBの利便性がさらに高まりました。
いろんな規格が次々と発表される昨今において、なかなか追いついていけない方のために分かり易く解説していきます!
USB PD
従来のUSBは給電能力が低く、高い消費電力を必要とするノートPCなどへのデバイスに対し、給電目的で出力を行うことは困難でした。
そんななか、給電規格の1つとして開発されたのがUSB PDです。
2012年にUSB PD(1.0)が発表され、現在はUSB PD(3.0)が最新のバージョンとなっています。
USB PD(3.0)では、「5V/9V/15V/20V」の4段階の電圧(V)を基本とし、最大5Aの電流を掛け合わせることが可能です。例えば、20V/5Aの組み合わせで最大100Wもの給電能力を実現することができるのです。
驚きの給電能力
最大100Wもの給電能力がどれほどすごいことなのかを説明させていただきます。
昔からよくあるスマホ充電器の出力スペックは、5V/1Aの5W相当が標準的でした。
また、最新のスマホなどの機能でよく見聞きするQuick Charge3.0という急速充電規格は、最大18Wが限界となります。
これらと比較すると、最大100Wもの出力値がどれほどすごいか分かりますよね。
充電先のデバイスのスペックにもよりますが、高出力ゆえに充電時間を短縮することも可能となります。
接続機器に応じた動作
USB PDは、自身が持ち合わせるパワールールに則り、接続先のデバイスに応じて電圧(V)と電流(A)の組み合わせを決定し、給電を行います。
また、3Aを上回る電流(5A)を流すには、eMarkerというICチップの搭載が必要となります。
eMarkerは、自分の電気特性を相手機器へ伝える役割を担っています。
eMarker がUSB PD規格に合わせて最適な電力調整を行い、安全かつ高出力な給電が可能になるのです。
例えば、消費電力30Wのデバイスに対し、20V/5Aの組み合わせで最大100Wの高出力を行わないよう、万が一の事故を未然に防ぐ意味でも重要なICチップなのです。
配線がスッキリ
USB PDの機能をうまく活用すれば、ゴチャゴチャとスペースを邪魔していたケーブルがスッキリするなんてこともあり得ます。
給電能力が高まったおかげで、各デバイスからそれぞれ電源を取る必要がなくなるのです。
USB PDの話から少し脱線します。
USB Type-Cの「Alternate Mode」を活用することで、PC本体からモニターへの映像信号も、電力の供給とともに送信することが可能となります。
USB PD対応のケーブル1本で電力の供給と映像信号を送信することができるとは何と素晴らしいことでしょうか!
Alternate Modeについてはこちらをご参照ください。
・Thunderbolt 3とは?USB Type-Cとの違いを徹底解説
想像しにくい方は以下のイラストをご覧ください。
※イラスト内のすべての機器がUSB PD対応であることが前提
ACアダプタ選定の重要性
USB PDの機能を発揮させるためには、電源供給元となるACアダプタのスペックがとても重要になってきます。
例えば、合計60Wの電力が必要なデバイスを接続しようとした場合、電源供給元となるACアダプタは最大出力60W以上のスペックを備えた商品でなければいけません。
60W相当の出力が必要にもかかわらず、最大出力45WのACアダプタを使用していては、15W相当が不足しているためデバイスが正しく動作することが難しいのです。
USB PD対応商品といえども、最大出力値は商品によって様々なのです。
そのため、用途に合わせたACアダプタ選びがポイントとなります。
単純に1対1で接続する場合は、各々の消費電力を確認しながら、ACアダプタを選定すれば問題ありません。
ただし、多数のデバイスへの給電を目的とした場合、接続するすべての商品の消費電力を確認し管理する必要があります。
最初のうちは接続する複数のデバイスの消費電力を把握できていたとしても、日に日に記憶は薄れていくものです。ACアダプタのスペック以上の消費電力が必要となる場合は、高出力のACアダプタを改めて購入するか、電源供給元を2つに別けるなどの工夫が必要となります。
ただし、これに限ってはUSBだけの話ではありませんね。
結局は通常のACケーブルを複数使用していても、タップなどでタコ足配線している場合は上記と同じように消費電力の管理は必要ですから。
USB Type-CにはUSB PD未対応品が存在する
現行のUSB PDは、USB Type-Cコネクタを採用している機器で使用することができます。
ただし、USB PDはUSB Type-Cのオプション規格であり、必ず対応しているわけではありません。
「USB Type-Cは給電能力が高い!」と、誤解を招く表現が見受けられるため、USB Type-Cコネクタ搭載の商品は、必然的に給電能力が高いものだと勘違いをしてしまう方が増えています。
USB PDの機能を発揮するには、それぞれUSB PDが搭載されたデバイス同士で接続する必要があります。
片方のデバイスがUSB PD未対応であった場合、もう片方がUSB PDに対応していても、USB PDの機能は発揮されません。
また、USB PD対応同士のデバイスをそれぞれ用意したとしても、通信させるケーブルがUSB PD未対応であれば、この場合もUSB PDの機能は発揮できません。
必ずしも「USB Type-C=USB PD対応」ではない点に注意が必要です。
大抵のUSB PD対応商品は、パッケージや説明文に「USB PD対応」といった表記がされていますので、気になる方は一度チェックしてみてください。
USB PDに関する説明は以上となります。
内容を理解し用途に合わせた買い物ができれば、日々の生活がスマートかつ時間短縮につながるはずです。
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